取り組み希望リスト
県民の皆さんに性の多様性について広く知ってもらい、性的少数者の困りごとをなくしていくために、行政や議員の皆さんに希望する取り組みをまとめました。
〇取り組み希望リスト(2019年度版)の説明
リストのうち、項目①~⑤について、主な内容を記載します。
(皆さんからの修正等のお声がありましたら、見直していきたいと思います)
【①研修・啓発】
恋愛や性愛の方向性をあらわす「性的指向」や、性別の自己認識をあらわす「性自認」は、人権の課題として挙げられています。
しかし、性的指向や性自認という言葉やその意味をご存じない方も、まだまだ多いと思います。
行政には、性的指向や性自認を含めた性のあり方は多様であること、性のあり方を理由に困っている人がいることを県民に広く知ってもらい、解決していくことが求められます。
〈性のあり方の多様性について〉
恋愛や性愛の気持ちが同性や両性に向く人、恋愛や性愛の気持ちを強く持たない人、割り当てられた性別に違和感があったり苦痛を感じる人、自分が望む性別で生きて行きたい人、性のあり方を決められない、決めたくない人など、多様な性のあり方があります。
〈性的指向や性自認に関する困りごとについて〉
性的指向や性自認に関して、学校・職場・病院・役所・家庭・地域等での困りごとや、生活する上での困りごとがあります。
●性別違和のために、戸籍の性別による男女分けや、男らしさ・女らしさの当てはめ等に困難を感じる人や、つらく思う人がいます。
(例えば、服装、髪形、トイレ、職種、書類や保険証等の性別欄、氏名欄、「男のくせに」「女らしくしなさい」といった声かけ、性別違和への偏見、周囲の視線など)
●異性愛を前提とした考えや社会の仕組みなどに困難を感じる人や、つらく思う人もいます。
(例えば、親や家族からの結婚のプレッシャー、学校・職場等での恋愛や結婚の話題、同性愛等への偏見、同性パートナーと住居を借りにくい、職場でパートナーやその子どもに関する事柄を相談しにくい、病院で手術や入院等になった場合の同性パートナーへの配慮が可能かなど)
これらの課題を解決していくために、各所での研修や啓発が必要です。
研修や啓発等を実施した場合、それを知らせることでも、市民や利用者への啓発、地元当事者へのエンパワーメントになります。
(根拠となる計画)
「富山県人権教育・啓発に関する基本計画」「富山県民男女共同参画計画」など
【取り組みを希望する内容】
・行政職員等への研修
⇒2021年11月、魚津市職員向けの研修が行われました。
⇒2019年度、富山市職員向けの講演会が行われました。
・人権擁護委員への研修
⇒2018年度、講演させていただきました。
・教職員への研修、保護者向けの啓発
⇒2016年度から、随時講演させていただいています。
・医療、介護、福祉等の施設職員向け研修
⇒2020年度、医療従事者向けに講演させていただきました。
・企業の管理職向け研修
・地区センターの行事などを利用して、住民が学ぶ機会を作る
・性の多様性やSOGI(性的指向と性自認)に関する、講師やアドバイザー等の養成
・広報誌やホームページ、冊子の作成等による啓発
・必要に応じて、行政の行動計画(タイムライン)を作成する
⇒啓発の実施例:魚津市ホームページ 地域協働課 市民交流係「性的少数者について」
⇒県のホームページに、「性の多様性に関する理解について」のページが作られました(令和2年6月)
⇒富山県や富山市等の人権の催しにおいて、性の多様性をテーマにした講演やDVD上映等が実施されています
【②条例や計画等の策定・改定】
SOGI(性的指向と性自認)を含めた多様な性のあり方、多様な生き方があることの啓発や尊重等を条例や計画などに盛り込んでいただくことで、人権教育や啓発が推進され、性的少数者の困りごとの解消につながっていきます。
採用選考においては、LGBT等の性的マイノリティの方など特定の人を排除しないよう、厚生労働省から示されています。
職場におけるハラスメントには、「性的指向」「性自認」に関することが盛り込まれています。
(人事院規則やモデル就業規則等を参照ください)
【取り組みを希望する内容】
・県の条例や計画等を策定、改定し、性的指向及び性自認等に関して盛り込む
(人権教育・啓発に関する計画や、男女平等/共同参画に関する条例・計画、いじめ防止基本方針、自殺対策計画など)
⇒人権の計画について:2020年3月、「富山県人権教育・啓発に関する基本計画」が改定され、「性的指向、性自認」について盛り込まれました。
そのほかの計画等や市町村の取り組み状況は、「富山県 行政等の動き」のページもご覧ください。
・市町村の条例、計画等の策定や改定に際して、県から支援を行う
・企業等の規則、ハラスメント規定等の改定への支援を行う
(参考資料)
「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月25日 閣議決定)
「自殺総合対策大綱」(平成29年7月25日 閣議決定)
「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日 文部科学大臣決定 最終改定 平成29年3月14日)
「公正な採用選考をめざして」(平成30年度版)厚生労働省
「人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)の運用について」(最終改定 平成28年12月1日)
「モデル就業規則」(平成30年1月)厚生労働省 など
【③公文書等への配慮】
性別違和を有する方などは、申請書や証明書等の文書や被保険者証などに戸籍上の性別や氏名が表記されることに不安や苦痛等を感じ、書類を申請しづらい、投票所に行きづらい、医療機関にかかりづらいなどと感じる場合があります。
【取り組みを希望する内容】
・申請書、証明書等の行政文書の性別欄の法的根拠の点検及び不要な性別欄の削除
⇒実施例:魚津市 魚津市議会議事録 平成17年6月定例会(2005-06-13)参照
⇒富山県議会 令和元年11月定例会(2019年12月4日)「県における申請書等の書類の性別記載欄について調査し(中略)、法令上の義務づけや業務上の必要性を踏まえて見直しを進めてまいりたい」
⇒2021年度の県立高校と特別支援学校の入学願書などから、性別を記入する欄が削除(2020(令和2)年11月12日)
・投票所入場券や期日前投票の書類等の性別表記の方法の見直し、または廃止
⇒投票所入場券の性別表記について:2022年7月10日の参議院選挙において、富山市の投票所入場券の性別表記がなくなり、これで県内13市町村で入場券の性別表記がなくなったとのこと。残る2市(南砺市、砺波市)については、2023年春の統一地方選に合わせて改修予定とのこと
⇒投票所入場券について:富山県議会 令和元年11月定例会(2019年12月4日)「本県でも2つの団体の選管で性別を数字で記載をしている」
「投票環境の整備は民主主義の健全な発展の上で重要な課題」「全国の先進的な取り組みを県としても調査いたしまして、各市町村選挙管理委員会に情報提供しますとともに、できるだけ前向きな検討をしていただけないか働きかけをしてまいりたい」
・被保険者証の性別表記と氏名表記に関する厚生労働省からの通知(*)を踏まえ、配慮ができるよう整備する
⇒実施例:富山市ホームページ 「国民健康保険に入るとき・やめるとき」
・印鑑登録証明書の性別欄に関する総務省の通知(*)に基づき、印鑑条例を改正し、性別欄を廃止する
⇒県内のすべての市町村において削除されました。(2020年10月現在)
・実施した配慮事項について、広く住民へ周知する
⇒実施例:富山県「その性別欄、必要ですか?」のリーフレット作成(県民生活課)
⇒実施例:富山市ホームページ 「国民健康保険に入るとき・やめるとき」
(*参考資料)
「被保険者証の性別表記について」(平成24年9月21日)厚生労働省
「被保険者証の氏名表記について」(平成29年8月31日)厚生労働省
「印鑑登録証明事務に係る質疑応答について」(平成28年12月12日)総務省
「住民票の写し等の交付に係る質疑応答について」(平成28年12月12日)総務省
【④学校の制服について】
性別違和のために、学校の制服や学校行事(入学式や卒業式、発表会など)での服装に苦痛を感じる児童生徒がいるほか、進学希望の学校に男女の制服があることで、その学校への進学をあきらめる場合等がある。
【取り組みを希望する内容】
・学校の制服や学校行事での服装について、県内の小中高等学校を対象に、過去に児童生徒や保護者から寄せられた相談内容を調査する
・県内の小中高等学校に通う児童生徒を対象に、学校の制服や学校行事の服装で困っていることはないか、無記名のアンケート調査をする
・県が主体となって、学校の服装に関する児童生徒の困りごと解消に向けた話し合いの場を設定する
・上記の話し合いの場等において、制服及び学校行事での服装のあり方や、学校としてできる支援等について検討する
・検討結果について、各教育委員会、各学校を通じて、児童生徒および保護者へ周知する
⇒令和4年度から、県立高校全39校で性別によらずスラックス着用が認められるようになりました
⇒県立高校で女子の制服にスラックス着用を導入している学校は、令和3年度で8校、令和4年度で11校になる見込み
(富山県議会 令和3年6月定例会 予算特別委員会(令和3年6月24日))
⇒富山市立中学校26校のうち、女子生徒が制服にスラックスを選べる学校は16校、2022年度以降の導入を検討している学校は残り10校とのこと
(富山市議会 総務文教分科会・委員会(令和3年6月25日))
【⑤やむを得ない理由により婚姻関係をもてないカップルへの配慮について】
同性同士のカップルや性別違和を有する異性愛カップルなど、戸籍上同性であるために、やむを得ず婚姻関係をもてない方とそのパートナーが、公営住宅を借りる際や、職場や病院等でパートナーや子どもへの配慮をしてもらえないなどの場合が考えられ、生活上の不利益や不安等が生じている恐れがあります。
【取り組みを希望する内容】
・公営の住宅や病院等において、過去に同性パートナーに関する相談事例等があったか調査する
・県内の主な民間企業を対象に、同性パートナーに関する相談や事例等が寄せられているか調査する
・互いのパートナーシップを公的に証明できる制度について話し合うために、県が主体となって検討会を設置する
・上記制度に関して、住民や関係者、関係団体等から広く意見を募る。また、意見交換できる場を開催する
・制度(案)を作成し、意見募集の実施を経て、制度を制定する
・制度の運用開始に伴い、市町村や医療機関、民間企業、住民等へ周知啓発する
⇒「パートナーシップ制度」のページもご覧ください。
⇒令和5年1月30日、「富山県パートナーシップ宣誓制度」が3月1日から開始されることが発表されました。
⇒県のパートナーシップ制度は要綱での実施を検討(令和4年6月13日)
⇒県のパートナーシップ制度導入に向けて、関係団体からのヒヤリングを実施(令和3年12月~)
⇒富山県議会で、副知事が県のパートナーシップ制度の導入を検討する旨を表明(令和3年12月2日)
⇒現在、当県の事業や県内の市町村でのパートナーシップ制度を導入している事例はないが、ほかの自治体の状況などをよく情報収集して、どのような制度が可能かについて、調査研究してまいりたい(富山県議会 令和3年6月定例会 予算特別委員会:横田副知事の答弁)
以上です。性的少数者が安心して暮らせる富山にしていくために、行政に携わる皆様や議員の皆様には、これらの取り組みを一つずつ進めていただくことを希望します。どうかよろしくお願いいたします。
2019年7月1日 リスト①~③公開
2019年10月1日 リスト④、⑤公開